2019年11月10日日曜日

くっきりした魂の峠を越えてしまって



整理が枯れ蔓にまだ揺れている
十三季もある地方の
饐えた村の
家族全員が死に絶えた
立派なお屋敷の
中庭の
水の豊かに清く湧き出続けている井戸の端の
イチジクの木
数本

分厚いコートを着てきて
本当に
よかった

昼過ぎから急に冷えてきているし
それに
肘のあたりを
見えもしない手が
突っついたり
引っぱってきたり
しているから

必要もない外国語を
無性に学びたくなる荒野がある
髪の毛を
はげしく吹かれながら
もう
死んでいるのも同じじゃないかと
目を細めながら
つぶりながら
しきりに思うが
そうしながら
ワタシハイマ一本ノシナヤカナ木デス
などと
新たな言語で作文を始めている

家族全員が死に絶えた
立派なお屋敷の大きさはなんとも本当に大きい
これを飲み込むのだ
この大きさを
はるかに小さなウワバミとして
飲み込むのだ

朝日など
もう
上らなくていい
くっきりした魂の峠を越えてしまって




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