ときどき豪雨に見舞われた十二月二日の東京では
夕暮れまで劇的な雲が流れ続けていたが
十八時三十分頃に渋谷にいたわたしはふと空にひかりを感じ
見上げてみると雲のかたまりからべつのかたまりへ
太い棒状のひかりが流れたり点滅していた
月のひかりかと思ったが月齢五・五のひかりにしては強すぎ
そもそも月のひかりがライトのように空を横に流れたりはしない
見続けていると雲のあいだから四方にひかりの棒は向けられ
べつの場所でもひかりの流れや回転が見られた
雲のあいだになにかを探すように飛行体が動いているかのようだっ たが
しばらく立ち止まって見続けているうちに
巨大な円盤の端の部分が頭上にあるのではないかと想い至った
すくなくとも渋谷全域を覆うような巨大さが推量された
あゝついにここまであからさまに出て来たのかと思ったものの
ずいぶん突飛な思いでもあるのでもちろん信じ込みはせず
急いで帰る必要もあったのでその場を離れたが
かなり疲れていて足取りも重くなりがちだった夕べにもかかわらず
この巨大なものを見たと思い至った時から急に疲れは消えて
驚くほど軽いからだになって駅のほうへと歩いて行けるようになっ た
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