2020年1月18日土曜日

そんなことだけの

 
たとえば冬の
あたりまえにうすら寒い
ひかりの弱い午後の
いかにも冬らしい
軽いさみしさやさびしさや

そんなことを
多すぎることばでではなくて
かといって
俳句の
もううんざりの
あの口調ではなくて
平易に
けれども
あゝ、ほんとうに
そうだ
そのとおりだ
と思えるふうに
書いてくれている詩なんかを
読みたいと思う
ほんとうは

なのに
詩人はみんな
じぶんのことを語り出したり
じぶんの感情や
考えや
いまの世の中のことなんかを
くっつけて語り出してしまって
つまらない
うざったい
わずらわしい

ひとりの人間として
とか
個人として
とか
現代人として
とか
そんなの
どうでもいい

たゞ
冬の日の午後の
あたりまえのうすら寒さや
ひかりの弱さ
いかにも冬らしい
軽いさみしさや
さびしさや

そんなことだけ
書いてほしい
そんなことだけの
詩がほしい




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