2020年3月8日日曜日

昔からの決まり文句を口に


  
目をつぶって就寝しようというとき
現在の事象の裏側や未来のすべてが見えるようになってから
じつはもうだいぶ経つ
だからといってうまく語るわけにはいかない
すべてが見えると時間の差や場所の差はつかないので
内容をことばやイメージによる思考で表わそうにも
時空観念の分節化によってのみ成り立つ物語化や映像化には適さな
あえて行おうとすれば物語性や論理性を意図的に崩す詩形体や
動画ではなく静止画の写真やイラストや絵のほうがよい
ひとに向けてしゃべったり語ったりというのはいちばん適さない形体で
というのも語りというものの形式的制約は強すぎるし
そもそも非常に粗い伝達形体のためあまりに多くのものを
削ぎ落とさないといけないのでわたしひとりはわかっているけれど
ひとには語らずしゃべらず伝えないでいることになる
多くの霊能者たちもおなじことを強いられているだろうけれど
なにが起こっていこうと初めから伝える必要はないとはわかっているので
もどかしく思ったりいらいらするということはない
目の前でひとが大量に死んでいく場に立ち会うことがあっても
たゞ見ているほかないときがあってこれには耐え続けるほかない
伝えてやれれば避けられたのにと思うが運命の神が唇の前に指を立てる
なにが起こっても此岸で起こることはいずれただの学芸会
どれほどこの世に価値と意味がないかをじぶんで理解できるまで
ひとびとはわめき続けさわぎ続け努力したり企てたりする
企画したものも作ったものも奪ったものも獲得したものもすべて
失われ費え去って溶解していってしまうまで
いわゆる歴史なるものは続きいわゆる人類なるものは続き
ほんとうに果ての果ての滝壺まで一応かたちを取りながら進んでは行く
わかっている者たちはわかっているであろうと昔からの決まり文句を口に
たゞ見ていよう、とりわけ欧米の崩れ潰えていくさまを




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