朝顔の芽が出てくるとうれしいのは
小学一年生の時の理科で
はじめて蒔いた種が芽生えたよろこびが
いつまでも心に刻まれているからかもしれない
学校に上がる前にも家で種くらい蒔いたはずだが
クラスみんなの鉢を並べて一斉に発芽させる風景には
集団ならではのイベントのようなものがあった
朝顔の芽はまず腰を曲げたまま土の上に出て来る
双葉はまだ黒い種の殻に入ったままで
ずいぶん曲がった緑色のチューブがまず出る
何度見ても何年経って見続けても
一年生の時に学校でみんなでこれを蒔いたんだ
頼りになる田舎の青年のような鈴木信男先生が
小学一年生の時の担任だったんだ
ぼくは宇宙少年ソランの青い上履き入れを
さんざん振りまわしながら入学式へ向かい
学校の門の両脇に咲いていた桜の木のところでは
いっそう盛大に上履き入れを振りまわして
はじめての学校というものへの入学を
全身でよろこんだものだったが
ソランの脇にいる宇宙リスのチャッピーが
なぜだか反対に描かれていてヘンだなあ
どうしてだろうかなあと気になり続けていた
チャッピーが反対になっていなければ
青い上履き入れは完璧なのになあ
どうしてだか惜しいなあと返す返す思いながら
完璧なものってないんだという学びを
はやくもぼくは始めていたのだったか
0 件のコメント:
コメントを投稿