馴染みの飲み屋で
(少し暑い日だったので、もちろん
生ビールを頼み
はじめて此処に連れてきた妻と
まずは焼き鳥を注文し
めずらしく
(こんな店ではうまくもないだろうに、と思いながら、なぜか
卵焼きまで追加で注文して
まっ先に来た生ビールをひと口ふた口飲みながら
あゝ、うまいね!
と言いあって
繁盛して満員になっている店内を
見まわしてみる
そこで目が覚めて
変
というほどでもないものの
めずらしい
夢を見たものだなと
現実に
帰って来ようとするうち
もっと
印象のつよい夢を
たしかこの夢の前に見たはずだが
と
横たわったまゝのからだで
思い出そうとしていたら
どこだったか
1階住まい・戸建て・持ち家だった時代に
おもての通りからすぐに上がって来れる
縁側もどき付きの
不用心な居間
で
人をふたり殺した
夢を見て
それを
じぶんの意識に対して覆い隠すために
飲み屋の夢を内奥が創り出して
隠匿カバーとして
寝起きのじぶんに見せつけていたとわかった
ふたりの男が
複雑な理由から
というより彼らの誤解から
わたしを殺しに来た
ことに
対抗したもので
ひとりの男はピストルと短めの斧
もうひとりの男は素手で
かかってきた
風体から
彼らがヤクザ者であるのは明白だったので
わたしはすぐに
容赦なく彼らの命を奪うことを決めたが
こちらには
なんの武器もない
せまい居間だったので
おのずと
ピストルと斧を持っている男に抱きつくようになり
もみ合っているうち
ピストルを男の顔に向けることができて
わたしは発射させた
男の力が緩み
見ると鼻が消えて顔の中央に赤い肉の穴ができていた
そのままピストルを取り上げ
斧も取り上げて
もうひとりの男に向かおうとすると
すでに
その男の顔のまん中も陥没して肉片がまわりにぶらぶらしており
どのようにやったのか
わたしの意識が追いつく前に
とにかくも
処置を終えてしまっていた
うめき声を洩らし
まだ痙攣しているふたりの男を見下ろして
死体の処置をしなければならない
と
思いはしたものの
ここはわたし自身の家なのだし
勝手に入り込み襲撃してきたのは明白だし
警察を呼んで
後は任せればいいと思い直し
まったく
心は動じなかった
たゞ
この見事な自己防衛について
警察はかなり詮索してくるのではないかと思えたが
こんなことができた本当の理由にまでたどり着いて突き止めるのは
生半な推測では不可能だろうと
結論した
その後に来た
覆いとなった飲み屋の夢の中で
生ビールを
ひと口ふた口飲んで
あゝ、うまいね!
と言いあって
繁盛して満員になっている店内を
見まわしてみている
わたしの脳裏には
このふたりの襲撃者をさっぱりと殺しおおせた事実が
ちかちかと
なにかのイリュミネーションのように
点滅していたのは
本当にリアルに
よく
覚えている
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