わたしをていねいに生きる
どこかへ
向かう
向かわされる
向かわなければならぬ
雇われ船の
船漕ぎに
わたしを貶めてしまわずに
わたしをていねいに生きる
たまたま今
手のひらに触れたものを
とっても大事に
触れ続ける
ものにも
ものの肌があって
今
そのものの肌のありようを知るのは
宇宙で
わたしの手のひらだけ
スマートフォンの鏡面でも
蚊に刺された足首でも
100円ショップのマグカップの取っ手でも
けっこう高価な万年筆の軸でも
料理前の青魚の肌でも
泥のちょっと付いている青菜の葉でも
廊下に落ちていた綿埃でも
たまたま今
手のひらに触れたものを
とっても大事に
触れ続ける
たぶん
遠くまでの見通しとか
長い計画とか
出会ったこともない
人類とかいう法人のようなもの
概念人のようなもの
そんなものを
空調の効いた部屋に籠って考えている必要はなくて
わたしをていねいに生きる
とりあえずは
すべての動作を
ちょっと
ゆっくりさせてみることから
わたし
はじめてみるけれど
どう?
あなたは?
ものを手に取るのも
カップに湯を注ぐのも
ページをめくるのも
遠い昔のものを思い出すのも
ひとつの雲から
もうひとつの雲へ
目を動かし
気分を動かすのも
ちょっと
ゆっくりさせてみることから
わたし
はじめてみるけれど
どう?
あなたは?
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