(個人詩誌「ぽ」第66号[2003年9月]
去っていく気になったの、夏?
さびしい陽射しに
おおかた
人生も
終わってしまったよう
味の落ちた
残った
グレープフルーツジュースを
飲んでいる
きょうは
風が
涼しい
だれからも
たよりは届かず
取り残されていく
やさしく
あいかわらず
ひとりで
行かなかった
たくさんの場所
行くなら夏に
という
あそこや
ここや
どれも遠くて
行きのがしたまま
見のがしたまま
あゝ 遠すぎる映画のよう
いまでは
蝉はまだ
そこここで啼いていて
お祭りのあとの
残りの花火のように
陽も
ときどきは強く射すけれども
そのなかには
もう
いない
夏
生きている
っていうのは
ぽっかり
空いたこころのまま
こんなふうに
取り残されること?
いつも?
思いは
くり返され
蝉たちの声のほうへ
逝く
行ったことのない
あの森のあたり
なんだか
とってもにぎやかな
蝉たちの歌声が
ある
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