2020年9月6日日曜日

だからわたしたちはくだらないと言う

 

愛とはなにかと考えていた

若い頃もあったので

それがどんなにくだらないことか

よくわかっている

愛などということばは要らないし

それについて考える必要もない

そうわかっただけでも

老いたのはよかったと思う

 

なにを言うのか

世界中で昔からたくさんの人たちが

愛について真剣に悩み

考え議論もしてきたというのに

それをくだらないこととはなんだ

などと言われてもかまわない

たくさんの人たちの思索の結果が

今の人間たちのこの世界で

今の人間たちのこの世界のありさまはすべて

愛についての考えや議論から出てきた

 

だからわたしたちはくだらないと言う

愛ということばを口にするのも

思うことさえも止めて

今のこの世界のありさまをたゞ見よ

どこのどれがくだらないか

そればかりか害悪を成しているか

見つけるのにそう困難はないだろう

せっかく地球は美しく見事なのに

それを損なおうとする者たちがいて

電子音をがなり立てて愛を叫んでいる

木を粉砕して作った紙に愛と大書したりする

森も原も川も海もそのまま無限の美だというのに

それらの美の中で沈黙せずに

破壊しコンクリートで塗り固めて

電気を引いたり空調を付けたりする者がいる

その空間の中で愛の展覧会を開いたりする

 

それらの者たちが根こそぎ絶やされねばならない

それらの者たちの精神が殲滅されねばならない

地球の天候も大地も細菌もウイルスもよき働き手

ついに大掃除のために目覚めた彼らとともに

われら人類のうちからも根絶を開始しようではないか

わたしたちは「わたしたち」と言う

最後の軍となって人間をこそ根絶しなければならないから

わたしたちが最後の世代となるように努めよう

人間のすべては滅びなければならない

なにひとつ地上には残らないように

なにひとつ宇宙にも残らないように





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