愛とはなにかと考えていた
若い頃もあったので
それがどんなにくだらないことか
よくわかっている
愛などということばは要らないし
それについて考える必要もない
そうわかっただけでも
老いたのはよかったと思う
なにを言うのか
世界中で昔からたくさんの人たちが
愛について真剣に悩み
考え議論もしてきたというのに
それをくだらないこととはなんだ
などと言われてもかまわない
たくさんの人たちの思索の結果が
今の人間たちのこの世界で
今の人間たちのこの世界のありさまはすべて
愛についての考えや議論から出てきた
だからわたしたちはくだらないと言う
愛ということばを口にするのも
思うことさえも止めて
今のこの世界のありさまをたゞ見よ
どこのどれがくだらないか
そればかりか害悪を成しているか
見つけるのにそう困難はないだろう
せっかく地球は美しく見事なのに
それを損なおうとする者たちがいて
電子音をがなり立てて愛を叫んでいる
木を粉砕して作った紙に愛と大書したりする
森も原も川も海もそのまま無限の美だというのに
それらの美の中で沈黙せずに
破壊しコンクリートで塗り固めて
電気を引いたり空調を付けたりする者がいる
その空間の中で愛の展覧会を開いたりする
それらの者たちが根こそぎ絶やされねばならない
それらの者たちの精神が殲滅されねばならない
地球の天候も大地も細菌もウイルスもよき働き手
ついに大掃除のために目覚めた彼らとともに
われら人類のうちからも根絶を開始しようではないか
わたしたちは「わたしたち」と言う
最後の軍となって人間をこそ根絶しなければならないから
わたしたちが最後の世代となるように努めよう
人間のすべては滅びなければならない
なにひとつ地上には残らないように
なにひとつ宇宙にも残らないように
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