ニヒリズムということなら
人後に落ちない
誰を見ても
どうせ死ぬのに
としか
思わない
誰がなにに打ち込んでいる/うつつを抜かしている/嵌まっている
どうせ終わるのに
としか
思わない
誰がなにを達成した/獲得した/成就した…
どうせ忘れられるのに/越えられるのに/古びるのに
としか
思わない
主義ではない
地上滞在が
おのずと
こう思わせるようになった
俳優といえばアラン・ドロン
ジェラール・フィリップ
ジェームズ・ディーン
などという列挙が
もう
若者には通じない
まったく
ブリジッド・バルドー
マリリン・モンロー
グレース・ケリー
オードリー・ヘップバーン
などと見せると
昔にもきれいな人
いたんだァ
としか
ならない
ヴェロニカ・レイクや
キャロル・ロンバート
リタ・ヘイワースに到達するには
長い長い
それも偶然にいたずらされての
掘り起こしを
していかないと
なにかというと山本直純だった
團伊玖磨の続々々々…「パイプのけむり」だった
「兼高かおる世界の旅」だった
「スター千一夜」だった
もっと昔なら「シャボン玉ホリデー」だった
街の書店の文庫棚はかつて遠藤周作で埋まっていた
とにかく本屋に入ると住井すゑ「橋のない川」
丹羽文雄も街の書店の文庫棚を占めていた
なにかというと加藤周一でもあった
源氏鶏太しか読まないサラリーマンたち
あゝ、柴田錬三郎
五味康祐
山手樹一郎
舟橋聖一
佐々木邦
山岡荘八
北原武夫
中村武志
石坂洋次郎
大佛次郎
獅子文六
藤本義一
半村良
川上宗薫
宇能 鴻一郎
笹沢佐保……
アレルギーと身体虚弱とで
大学を出ても
職にも就けない
どこのバイトでも採用されず
採用されても
まず一週間以内にダメになる子と
このあいだ
久しぶりに話したら
この頃
笹沢佐保に凝っている
と言っていた
古本屋で極安の本をゴソッと買ってきて
栃木の奥の実家に閉じこもって
読んでいる
ひたすら笹沢佐保
コロナなんて関係ないです
あっしには関わりのねえことでござんす
どうせ前から外には出ないし
どうせコロナ後も外へは出ませんから
あ、読む本なくなったら
外に出ないといけないんで
ちょっと困りますけど
でも
木枯らし紋次郎です
あっしには関わりのねえことでござんす
ニヒリズムなんて
この子において
とうに
突き抜けられてしまっている
アレルギーと身体虚弱
バンザイ!
かもね
どうせ終わる
どうせ死ぬ
どうせ忘れられる
どうせ人数多すぎ
どうせ足のひっぱりあい
どうせ低レベルの攻撃しあい
どうせ資金と派閥の大きいほう勝ち
でも
3冊100円の黄色い古本で
笹沢佐保
じゃあ
ぼくは余生を
川上宗薫
と
いくかね
川端康成が愛読していた川上宗薫
かならず「取材」をして
ポルノを書き
女性たちとの交渉を「仕入れ」
女性器を「構造」と読んでいた川上宗薫
小柄ながら
性豪
床上手
川上宗薫
『笑っていいとも!』で
「尻の穴のふちどりにもいろいろあって…」と語り出し
タモリを慌てさせた川上宗薫
原爆で家族を喪ったのに
「ああいうことを売りものにしたくないんだ」と
原爆は書かなかった
川上宗薫
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