上野と浅草の中間あたりで用事があって
ほかの人たちと
どこかでなにか食べていこうということになり
わたしの場合は二十分で自宅に着けるので
ろくなもののない上野や浅草に寄るのはくだらないなあと思ったが
いつ死ぬかわからない老人相手ということもあって
今生のわかれの前のつきあいの気持ちで
しかたなく浅草へ
無言でいるのに耐えられなくなったのか
タクシーの運転手に
東京人だというのに老人のひとりが
浅草でおいしいのはどこかしら
などと
くだらない声のかけ方をしたら
タクシーの運転手が
なかなか悟った明晰な答えかたをしてきて
その日
いちばん面白かった
「浅草はどこでも似たり寄ったりですよ」
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