2020年12月4日金曜日

まず今日はこれぎり

 

北の丸公園で

ほんの少し紅葉の写真を撮っていたら

間に合わなくなりそうになって

早足で

国立劇場へ向かうと

けっこう

汗をかいてしまって

 

十二月公演第一部へ

河竹黙阿弥『三人吉三巴白浪』へ

 

序幕、二幕目、大詰だけの

ピックアップ上演だが

悪と

運命と

殺しとを

いい加減

といえばいい加減

ご都合主義

といえばご都合主義

とにかくも

力ずくで

観客が適度に戸惑う程度に複雑に

結びつけた作品なので

三つの幕の抽出だけでも

歌舞伎ならでは

魅力はしっかり迸る

 

時蔵、松緑、芝翫も

けっこう

役に合っている

と思うヨ

時蔵のお嬢吉三は

ひょっとしたら

なかなか

出ないような

当たり役なのでは

ないか

 

終わって

劇場から出ると

寒い!

午後になって

かえって

冷えてきたわいなァ

 

(思い出す事ども…

20代はじめ

(寒い夕暮れに散歩道を逸れて

(偶然見つけた古本屋に

(これまた偶然見つけた歌舞伎名作全集七、八冊

(がさっと買って

(重い帰宅をしたわいなァ

(若かったあの頃…

(若かったあの頃…

 

イギリス大使館前を歩いて行く

 

いいかい?

ここを一緒に歩いた友人知人たちは

もう

みぃんな死んじゃったんだよ

あるいは

みぃんな行方不明

名のある場所というのは

記憶の

歴史の

インデックスだ

索引だ

それらだって永遠じゃないけれど

ほんのちょっと

人体よりは

物質界滞在が

長引く

 

歩いて帰る途中に神保町に寄って

『三人吉三廓初買』の新潮日本古典集成版を買う

日本古典を置いている店を物色しながら

いくつか入ってみるうち

ほうら、見つけた!

読まれていない綺麗な本が400円也

古い岩波文庫版や創元社の名作歌舞伎全集では持っているが

注を見ながら

黙阿弥は熟読したくなったものだから

ちょっと前は

黙阿弥なんか下らない

面白くない

なって思っていたが

変わるもんだ

じぶんの趣向も

世の中と同じように

 

 

来週は

第二部の『天衣紛上野初花』(河内山宗俊)を見るので

偶然見つけた「明治の文学」版(坪内祐三編集)のテキストも買ってしまう

こちらは

ちょっと値が張って1000円也

 

早稲田大学の大学院時代

話す機会のあった河竹登志夫先生の紳士ぶりを

ちょっと思い出す

河竹黙阿弥の曾孫さん

河竹先生はこちらの指導教授と仲がよかったので

正門前とか

研究棟前とかで

よく

立ち話につき合った

 

ついでに

ついでに

新潮日本古典集成版の『源氏物語』全8冊が

400円というのも見つけ

中身を確かめたら

読まれていない綺麗な本だったので

紙袋を二重にしてもらって

買って帰る

他の版数種で『源氏物語』は持っているが

『源氏物語』の熟読読書会をしている義母が

むかし習った石田譲二先生の校訂本がほしいと言っていたので

まるごと提供するため

とにもかくにも

日本の文化遺産の頂点に当たるものが400

一冊たったの400円なのだから

 

新日本古典文学大系も

一冊500円でドサッと出した店もある

新入荷!

などと貼り紙してある

貼り紙が

十二月の冷たい風に

はためいている

 

千載和歌集も

金葉和歌集も

詞花和歌集も

ついでに

家に幾つも他の校訂版のある新古今和歌集も

新日本古典文学大系で

買い直しておきたいなァ

と思うが

重過ぎるので

ト柝の音

 

まず今日はこれぎり

 

めでたく打ち出し





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