2021年1月4日月曜日

アホラシ…と呟いてしまう

 


「ああ、わたしが間違っていた!」

アルバート・アインシュタイン

 


 

10万円のおせちのプレゼントが

京都の高級料亭から12月31日に届いたので

元日はそれだけを食べた

 

メインとなっているのは

白味噌仕立ての出汁に実山椒を入れ

煮立てた中に

A5ランクの霜降りの佐賀牛をくぐらして

しゃぶしゃぶにして食べる料理で

椎茸やほうれん草

たくさんの葱も

いっしょに出汁に泳がしておく

料亭はこれを

山しゃぶと称していた

 

〆には

牛肉や野菜の味がたっぷり出た後の

煮詰まった出汁の中に麺を入れ

とろとろになった出汁といっしょに食べるのだが

最後のこの麺がとてもうまく

高級な和食というのは

存外

A5ランクの牛肉よりも

こんなところの味わいにこそ

存在価値があるのかもしれないと

思わされた

 

食べながら飲んだ

ルイナールのシャンパンのせいもあるのか

食後はぐっとだるくなって

眠くなり

やはり霜降りの牛肉と

味噌や麺のあわせを

胃にいっしょに入れるのは

もうじぶんにはあわないとも

思わされる

 

ともあれ

元日は

これら以外はなにも口にせず

たった一食の日となった

相対性理論と量子力学の関連についての概説書を読み続け

概説書とはいえ

相当に注意深く読むべきところに差しかかって

スターリンの秘密警察に処刑された

天才物理学者マトヴェイ・ブロンスタインや

その友人レフ・ランダウから

ジョン・ホイーラーや

ホイーラー=ド・ウィット方程式や

重力場のファラデー力線や

ループ理論のあたりを

山しゃぶで重くなった胃とはべつに

脳にいちばんの仮設キャンプを置いているらしい

意識は

さまよい続けていた

(もちろん現代の生理学では

意識は腸にも

大がかりな仮設キャンプを設営しているのが

知られてきている)

 

それにしても

物理学の先端の知見においては

空間というものが存在せず

空間を作る量子によってのみ空間は発生するとか

時間ももちろん存在しないとか

それが当たり前になっているのを

知るのと

知らないのとでは

いわゆる“世界”なるものや

日常の食卓や

バスルームや

住まいの建物のエレベーター昇降や

トイレでの時間さえも

まったく変質してしまい

意識はもう

古い見方に戻ることはできない

 

なにもない空間というものがあって

そこの中で物や分子や原子が動いているというイメージが

もはや天動説なみの幻影でしかなく

あらゆる場所で同じように進み続ける時間というものも

あまりに時代遅れの妄想に過ぎないと知ってしまうと

いつまでも「新型」と呼ばれ続けている

“昔の名前で出ています”*なウイルス煽りも

遠い花火のようにしか見えない

 

アホラシ…

呟いてしまう

 

 

 

*小林旭『昔の名前で出ています』

https://www.youtube.com/watch?v=fUeAW0Y4aS8&feature=youtu.be

 






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