いまを生きろ
などと
悟ったようにみせたい人たちは
いつも言うのだが
わたしには過去のほうが
親しく
懐かしく
大切に思える
過去なら
どの過去でも
とほうもなく哀切に見えて
住んだ家々の
あの廊下
この廊下
どれも懐かしくて
思い出しては
こころで何度も辿り直してみる
あの家の風呂場から出るときには
こんな段差があって
ここにこういうふうに洗濯機があったので
足をこんなふうに踏み出してから
タオルをこんなふうに取って…
などと
思い出す
…というより
生き直す
…というより
いま
まさに
はじめてのように
生きてみるとき
生きてみて
よかったと思う
過去を持って
よかったと思う
こんなにふんだんに持って
よかったと思う
0 件のコメント:
コメントを投稿