遅く起きて
家で雑事をしていたら
すぐに夕方になり
さらに宵闇が街に染みてきて
すっかり暗くなってから
満開の桜を見に出る
日中のようにはよく見えない桜も
やはりとてもいいもので
離れたところで
街灯に赤らんでいるのが見えたりすると
桜は距離をおいて見えるのが
やはりいちばんよいと思えてくる
夜の桜を薄暗いなかで見たり
遠巻きに見たり
ぼんやりと眺めたりするときの
この夢見心地はなんだろう
見ていることや見えているものが
どれも幻や夢でしかないようで
大事なことも親しい人々も
あゝ 古い映画のように
もうすっかり通過していってしまって
わたしだけ現世という映画館のなかにまだ居て
たったひとり座ったまま見ているようだ
クレジットタイトルが流れていくのを
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