2021年3月28日日曜日

クレジットタイトルが流れていくのを

  

遅く起きて

家で雑事をしていたら

すぐに夕方になり

さらに宵闇が街に染みてきて

すっかり暗くなってから

満開の桜を見に出る

 

日中のようにはよく見えない桜も

やはりとてもいいもので

離れたところで

街灯に赤らんでいるのが見えたりすると

桜は距離をおいて見えるのが

やはりいちばんよいと思えてくる

 

夜の桜を薄暗いなかで見たり

遠巻きに見たり

ぼんやりと眺めたりするときの

この夢見心地はなんだろう

見ていることや見えているものが

どれも幻や夢でしかないようで

 

大事なことも親しい人々も

あゝ 古い映画のように

もうすっかり通過していってしまって

わたしだけ現世という映画館のなかにまだ居て

たったひとり座ったまま見ているようだ

クレジットタイトルが流れていくのを




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