満月も近い頃の
ゆうぐれ
南の遠くの空に
大きな台形の雲が立って
夕陽をあびて
あゝ
燦然と
と
言っていいほどの
輝きだ
いつも
すぐ手にとれるようにしてある
Nikonの
7×35の中型双眼鏡で
威容を眺めてみる
もう
25年ほどは
使っているのではないか
買ってすぐ
大阪の旅に持ち出して
大阪城の上から
これで眺めてみたことがあった
城の梅林が満開の
早春の頃のこと
少年時代には
天体観測の補助に
やはり
Nikonの
7×50の双眼鏡を使っていて
昔の海軍で
ひろく使われていた
このナナバイゴジュウの見やすさを
楽しんでいたが
20代で家出せざるを得なかった後は
もう
それには触れていない
ひとが
親と呼び
家族と呼び
実家と呼んで
親しんだり
貴んだりするものに
たゞ不在によって対峙し
空無化した数十年を
燦然と
あの遠い雲の威容が
寿いでいる
青嵐(あおあらし)過ぎたり誰も知るなけむひとりの維新といふも
春日井健
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