2021年12月9日木曜日

われ思う されど われ無し

  

親しんだひとびとを

ほんとうに

たくさん失ってきてみても

 

そのひとびとの

あのときの姿も

あのときの声も

まったく失われずに

耳や目のうらがわに

ありありと在るので

 

いつからか

思うようになっている

 

こう思う

わたしさえ

もう

死んでいて

わたしという

意識

のような

なにかうすい影

のような

ものが

しばらく続く

自動運動のように

 

そのひとびとの

あのときの姿も

あのときの声も

まったく失われずに

耳や目のうらがわに

ありありと在る

 

などと

思い続けている

のだろう

思う

 

われ思う

されど

われ無し

 

あゝ

なかったなあ

一度も

わたしの

われ

 

わたしの

わたし





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