池猫と呼んでみる
沼猫でもいいかもしれない
いや
どこの水にもいそうだから
水猫というほうが
ひろく役に立つ言い方かもしれない
そもそも
そこが池なのか
沼なのか
呼びわけに
ちょっと迷う
とりあえず
池猫と呼んでおこう
そこの池に
夜中に行こうとなった理由は
もう
思い出せない
大きな池である
とにかく
夜中に行って
池の端のほうを見ながら
立っている
水の流れがあまりないところで
澱んでいる
汚れが水面にある
小さな油の輪のようなものが
ところどころにある
むこうのほうから
水中を
白猫が近づいてきた
真っ白な猫で
顔が笑っている
口は上弦の三日月のようだし
目は下弦の三日月のようで
ずいぶん大げさに描いた絵のような
笑い顔である
水中を
それが近づいてくる
こちらに向かってくる
いっしょに来た数人で
―これが池猫ですか?
―これが池猫ですよ
―これがねえ・・・
などと
ことばを交わす
もうすぐ
こちらの足元まで来そうだが
まだ
着かない
近づいてくる
向かって来ている
0 件のコメント:
コメントを投稿