2022年4月24日日曜日

チリチリの髪の毛の国語教師


 

煙草くさき国語教師が言うときに明日という語は最もかなし

寺山修司

 

 



どういうわけだか

中学生の頃に通っていた塾の

ネズミ男によく似た

髪の薄い

それもチリチリの髪の毛の国語教師を

ふいに思い出した

 

中学生ながらに

意味のない授業だなと思いながら

しかたなく聞いていた

 

だって

国語の資料の便覧を使って

同音異義語や

反義語や

ことわざなどをいっしょに読んでいくだけ

なんだもの

 

しかたなく聞いていた

 

英語や数学とセット価格なので

国語の授業の日も

いちおう来ていたのだが

張り合いもなければ

意味もない授業だなと思いながら

しかたなく聞いていた

 

国語の授業なら

通っていた学校の先生のほうが

ド迫力で

怖すぎていやな授業ではあったが

中学生ながらに

あっちのほうが凄い授業だよな

とはわかっていた

 

なにせ

短歌も俳句もたくさん暗記させられるのだ

暗記してきているはずのものを

教室であてられて暗唱させられる

暗唱できなければ

髪をひっぱられて引き摺りまわされるのだ

正岡子規も

与謝野晶子も

そんなふうにして

スパルタで叩き込まれた

中原中也の「月夜のボタン」も丸暗記だ

島崎藤村の詩だって丸暗記だ

まったく

詩歌を詩歌らしからぬ軍事教練ふうに

丸暗記させられたのだ

 

そうして

塾の国語の時間には

ネズミ男が便覧を読んで誤魔化しやがる

 

意味のない授業だなと思いながら

しかたなく聞いていた

 

風采のあがらないチリチリ毛だな

と思いながら

しかたなく聞いていた





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