そしてひたすら自分の天使の性質のために・・・
エミリー・ディキンスン
生涯で
最高の美女に会ったのは
パリのとあるカフェで
ひとりでコーヒーを飲んでいると
あきらかにアラブ人とわかる
褐色の肌の若い女性が隣のテーブルに来た
長いが長すぎない黒髪に
黒い宝玉のような目
これ以上はあり得ないほどの
完璧なバランスの目鼻立ち
天使が舞い降りたようで
あたりの空気が一変してしまった
周囲にいた人たち皆が
黙って彼女を見てしまうほどだった
これだからパリはすごい
と思った
たったひとりの美女の出現で
空気がほんとうに
微細な水晶玉を散らしたように光るのを見た
スパングルを無数に宙に撒き
世界がラメやグリッターに埋めつくされる瞬間を見た
生きていながら
そのまま至上の美であり得る人が
こんなふうに隣のテーブルに舞い降りてきて
笑みまで振りむけてくれるのを
わたしは確かに生きた
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