2022年8月19日金曜日

アップアップ

 

 

 

夢をみればまた隠れあうこともできるが妹よ
江戸はさきごろおわったのだ
あれからのわたしは
遠く
ずいぶんと来た

いまわたしは、埼玉銀行新宿支店の白金(はっきん)のひかりをついてあるいている。ビルの破音。消えやすいその飛沫。口語の時代は寒い。葉陰のあのぬくもりを尾けてひとたび、打ちいでてみようか見附に。

 

荒川洋治
『見附のみどりに』 (「水駅」、昭和五十年)

 

 

 

 

 

ネット時代

もう

とう

飽和

 

スマホ時代にも

端末時代にも

とうに

アップアップして

 

アップ

された

フォトだの

動画だの

いやおうもなく

目に

飛び込んできて

アップ

アップ

 

アップ

アップ

溺れながらも

フォトを見るのは

好き

 

アップ

アップ

きれいだな

おもしろいな

すてきだな

 

そんなのは

ちょっと

保存しておきたくもなる

 

SNSのじぶんのタイムラインに

アップ

いただいちゃったりする

 

そういうのは

シェア

とかいうらしいが

べつに

他人に見せたくてしてるわけじゃない

じぶんが

見直しやすいように

つかの間

貯め込んでる

だけ

アップ

アップ

してる

だけ

共有なんて

そんな気

べつにないから

アップ

アップ

ですから

 

フォトにも

なんというか

格差がある

 

レベルの差がある

 

カラーがどぎつすぎるのは

もちろん

レベルが低く見える

 

いかにも

大衆が好みそうだよナ

っていう

フォルムとか

被写体とか

そういうのも

レベルが低く見える

 

でも

フォトを

アップ

アップ

たくさんシェアしてるうちに

ぼくは気づいた

 

ぼくって

ようするに

アップ

アップ

カラーや

フォルムを見たいだけなんだ

って

 

そうなると

人工的に調整されたカラーや

強調され過ぎたカラーも

カラーはカラー

って

ことになって

アップ

アップ

選択範囲に入ってくる

 

フォルムも

そう

時代を問わず

スポーツカーのフォルムには

やっぱり

圧倒的な異様な魅力があったりする

 

美女たちの

胸や腰の曲線美も

その人たちの一生のごくわずかの数年の

貴重な美で

御本人も

他人も

それが保たれてる

アップ

アップ

しっかり見ておくに限る

 

それら

フォルムの極みを見た後

そこらのニッポン人街のせつない風景なんか

見ちゃったりすると

アップ

アップ

哀し

哀し

となる

実地でワビサビしてる

中世趣味の

国だぜ

まったく

 

人目を惹く

ことなんか一切気にかけないで

ぼく目を惹く

カラーやフォルムだけを

アップ

アップ

つかの間

twitterに載っけてみてると

いつのまにか

国を問わず

いろいろなところの未知の人から

「いいね!」が来たり

リツイートされたりするようになった

 

じぶんの

その時々の好みで

枠を嵌めずに

アップ

アップ

カラーやフォルムを集めているだけだから

おんなじ好みの人が

アップ

アップ

「いいね!」してきているだけで

ここには

しがらみも

知りあい同士のなれ合いもなくって

アップ

アップ

ちょっと

いい感じだ

 

もとより

SNSなんて

アップ

アップ

中二病の人ばっかりの

心理的に不純なものの渦巻く場所の極みだと

思っているけれど

アップ

アップ

まったく見も知らぬ

世界のあちこちの人たちから来る

「いいね!」は

比較的

純粋なほうの表象かな

と思ったりする

 

アップ

アップ

 

アップ

アップ

 





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