2022年10月18日火曜日

ちょっと水のおもてを掬う


 

まとわりついて

時間が誘惑してくるから

蜘蛛の糸や

カラスウリの花のレースのようになって

つかみどころ

なくしてしまった人も

ひとりやふたり

だけ

ではない

 

―すぐ暮れる土地ですね

 

―峠の上にあるのにねえ

 

裸足で走っていった子が

また戻ってくる

走って

こんどは足も

なしで

 

だから

足音も聞こえません

 

あなたが

さっき聞いたのは

新月の

瀬を撫でて

ちょっと水のおもてを掬う





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