愛された記憶はどこか透明でいつでも一人いつだって一人
俵万智
たとえば
繁華な街の広場や
通りに
出てみる
お昼どきなら
特にいい
いっぱい
人が
歩いている
あっちの
店に向かったり
こっちの
レストランに向かったり
そっちの
中華屋を見に行ったり
あと10年もしたら
20年もしたら
30年もしたら
この人たち
ほとんど消滅するんだ
と思う
いつかわからない
でも
かならず
いつか
みんな消滅して
しまう
いなかったのと
おなじに
なってしまう
四次元の目で見れば
いま
もうすっかり
消滅してしまってもいるのだ
もうだれひとり
いなくなっているのだ
繁華な街の広場や
通りに
出てみながら
そう思う
いつも
もう
なにもかも
終わってしまっていて
もう
だれひとり
いなくなってしまっていて
ぼくだって
わたしだって
すっかり
透明で
いつでも
ひとり
いつだって
ひとり
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