キムラブルー
と呼ばれる青い陶器
で有名な
陶芸家の木村芳郎さんと話した時
モノハラ
という言葉を
はじめて聞かされた
物原
と書くらしい
陶工や陶芸家は
窯で陶磁焼成した後
窯出しの時に出てくるキズモノや
思うようにいかず
不出来だったものを
粉々に破壊して
捨てる
捨てる場所を
物原
というのだ
有名な陶工や
陶芸家が
砕いて捨てた破片なら
拾いあつめ
金継ぎなどして
つなぎ合わせたら
それだけでも
価値が出る
だから
物原では
捨てた破片は拾わないのが
礼儀となる
現代では
行政からの要請もあって
捨てる際には
ずいぶん
細かく砕くのだという
物原の話を聞くうち
子どもの頃
拾いあつめた土器のことを
思い出した
住んでいたところの近くにあった貝塚から
ちょっと土を掘れば
いくらでも
出てきた
土器の時代の人たちが
使っているうちに壊れた土器のかけらを
ゴミとして
貝塚に捨てたのだと
思いながら
拾い集めたものだった
しかし
ひょっとしたら
古代の陶工や陶芸家が
自分の思うようにできなかった土器を
すぐに
みずから壊して
物原に捨ててしまう
ということも
あったのではないか
縄文や弥生の頃にも
芸術的な志向があったのは確かだから
作ってはみたものの
作り手自身が気に入らない
という作品も
いくらもあっただろう
そんな時に
みずから割って
砕いて
地に戻そうとしてしまう
そんなことも
きっと
あったにちがいない
そんなふうに
木村さんに話すと
縄文や弥生の頃にも
たしかに
そんなことはあったかもしれない
現代ふうな作家性や
芸術性の観点から
というのとはちがっても
実用の観点からでも
せっかく出来たものを壊して
やり直すということは
じゅうぶんあり得る
当然あり得る
と答えてくれた
こんなことを含め
ずいぶん長く立ち話したのは
2022年11月の
日本橋三越本店6階美術特選画廊の
木村芳郎陶展*でのことだったが
東広島にある
木村さんの工房に
ぜひ
いらっしゃい
と言ってくれた
照明にも制限のある展示場で
並べた作品を見せたり
話して説明したりするだけでは
やはり
もどかしい
百聞は一見に如かずで
作っている現場を
じかに
見るに越したことはない
ということだろう
東広島には
行ったことがない
こういうきっかけでもなければ
行くことはないだろう
吟醸酒発祥の地
という謳い文句もあるが
なるほど
賀茂鶴や
亀齢などは
この町で作られる
俳人河東碧梧桐が
酒の新都と呼び
「日本酒の最高峰をここに築く」
と紹介したこともある
*「木村芳郎陶展 ―水平線―」(2022年11月23日~11月28日、
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