2022年12月14日水曜日

過去鑑賞者

 

歳をかさねてくると

なにを見ても

なにを聞いても

ちょっとした

どんな動作をしても

過去のたくさんの瞬間が

つよく蘇ってきて

あたまのなかは

忙しくなる

 

思い出されたことは

すぐに

つながっているほかの思い出を

引き寄せるので

どこまでも

どこまでいっても

思い出の

無限の連鎖

 

子どもの頃から

過去を思い出しては

ためつすがめつ

玉のように

いろいろな角度から

見直し続ける性質だったので

歳をかさねたからといって

思い出の宝玉を

見続けて楽しんでいるわけでも

ないのだが

 

あゝ それにしても!

過去のあらゆる瞬間たちよ!

わたしはおまえたちに驚き続け

おまえたちを愛で

おまえたちに感謝する!

なんとすばらしい玉の数々に

わたしは恵まれ続けたことか!

過去という宝玉の

飽きることない鑑賞者となるために

生まれてきたわたしだったか?

一瞬一瞬を生きるためでなど

じつはなしに?

過去を玉と成し

過去を愛でてあたたかく保管し続け

くりかえしくりかえし

こちらの角度から

またあちらの角度から

鑑賞し続けるためだけに

生まれてきた

わたしだったか?





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