化学の教科書を
最近
読み直しているのだけれど
そうだったな
イオン
って
いうのはギリシャ語で
「行く」という意味だったな
と
思い出した
ファラデーが
水溶液の電気分解の際
電極にむかって「行く」ものを
移動するものを
イオンと名づけたのだった
学校も出ていない
ファラデーが
よくまあ
ギリシャ語を知っていたな
と思うけれど
すごい独学者で
製本屋と書店に奉公しながら
多量の本を読破していたのだから
そのくらいは
当然に知っていたかもしれない
イオンなんとか
イオンかんとか
などと
今の社会ではよく使っているが
イオンという言葉を聞くたび
マイケル・ファラデーのことを思い出すと
なんだか
いい感じじゃないか
優秀な実験家だったファラデーも
数学の知識は乏しかったので
電磁誘導の法則を定式化するのには
ずいぶん困った
そこのところは
数学のよくできた天才マクスウェルが
手伝ってやったのだ
このあたりのことは
科学史の美談として有名なところ
マクスウェルは癌のために
1831年に47歳で死ぬが
歳上のファラデーのほうは
1867年に75歳で死ぬ
ファラデーはマクスウェルの死を
どれほど惜しく思っただろう
ふたりの関係を思う時
そんなことも考えたりする
子どもの頃
そう
小学五年生のある日
科学好き少年だったぼくは
近所の本屋で
岩波文庫という
驚くほど安価な本を発見したのだ
そうして
ファラデーの『ロウソクの科学』を買った
安くて
薄くて
ちっちゃくて
それなのに
内容がぎっしり詰まっていて
すごいものを見つけちゃった!
と有頂天になった
これが
はじめての岩波文庫購入
埼玉県浦和市の南浦和に住んでいて
その本屋は
ひかり書房といった
最初に買った新潮文庫も
そこの書店でだった
『フランダースの犬』 で
こんな子ども向きの本が
大人むきの文庫っていうシリーズに
入っていることにずいぶん驚いた
ひかり書房は
いまは
もうない
店主のおじさんは
中年だったが
ツルッパゲで
本を見ていると
よくハタキをかけにきた
おじいさんも
ツルッパゲだった
店主のおじさんは
年中
バイクで本を届けに出ていて
あちこちの道で
よく目にした
神よ
ひかり書房の
ツルッパゲのおじさんの霊が
どうか
やすらかならんことを
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