2023年6月28日水曜日

受けとり手のない思い出が

 

 

受けとり手のない思い出が
野山に
街に
たぶん

木霊して
澄んでいくばかり

午後の
なんと主語のない
あかるさ!

自転車を
もう一度買う必要が
ある?
引っ越して

あのあたりに
棲もうとするなら

縁もない
と思っていた
物の怪のようなものに
しだいに
なってきても
いたから

記す文字の
どれにも
宛先はないのに
昼顔が

やわらかく絡まった金網の

ところで
立ち止まり

ちょっと汗を拭うと

贅沢に
おお、贅沢に流れる時!


初蝉は

まるで古代ローマの頃のラテン語で
誤りなく滴らせるよ
夏の血液を

 

 


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