「存在するのは二つの党派だけだ。一つは堕落した人間の党派。
マクシミリアン・ロベスピエール
「市民諸君、あなたがたは革命なき革命を望んだのか。
マクシミリアン・ロベスピエール
フランスで何が起こっているかなど
知っている
それについて
あまりの多くの人が
なんやかや
フランスでは
喋りたがっているので
ぼくが
わざわざ日本語で喋る必要はない
そんなことより
七月六日から
入谷の鬼子母神では
朝顔まつりが始まることや
九日には
ほおずき市が浅草寺で催され
来週には
もう
靖国神社でみたま祭が始まることを
語ろう
これが
日本流の逸らし
時に
おそろしく
重いものを繊細に迂回して
斬首の後の刀の切っ先にさえ
季節のひかりの美を
見ようとする
フランスのことについては
しかし
答えはとうに出ている
第三共和政以降は
自由・平等・友愛というのが
国の標語なのだから
標語のとおりに徹するか
それとも標語を取り下げるか
どちらかにする他ない
そもそも
矛盾しあう「自由」と「平等」を掲げて
「友愛」を万能接着剤として使って
誤魔かしてみようとしただけの標語だから
100年以上努力してみましたが
やっぱり無理でした
取り下げます
と
きっぱり宣言したらいい
今のうちにそうしないと
いろいろ詮索されて
いよいよ追い込まれていくことになる
1793年版の『人間と市民の権利の宣言』で
「すべての人間は生まれながらに平等であり、
とあるのは
ずいぶん大ざっぱなのでいいとしても
1795年版の『人間と市民の権利の宣言』では
「平等とは、保護を与えるにせよ、罰を与えるにせよ、
となると
許されないはずの「世襲」なるものが
あれ?
あれ?
あれ?
と引っかかりはじめて来る
ロベスピエール流に言えば
「平等」は祖国と共和国への愛から生じるもので
それは極端な富の偏在を許さない
「平等」は世襲を廃することであり
課税は累進的なものでなければならない
これはサンキュロット派の「平等」で
すでにブリッソー派の「平等」とは異なっている
近代化への巨大な爆弾だった
ルソーの『社会契約論』ではどうなっているのだろう?
「平等という語で、すべての人の権力と富の大きさを絶対に同じに
権力の平等とは、(
富の平等とは、いかなる市民も他の市民を買えるほどに富裕になら
このことは、(権力と富が)豊かな者も、
こうした平等は、実際には存在しえない机上の空論だという意見も
そして注15には
「だから国家に安定性を与えたいならば、この両極端の違いをでき
現実社会というものを考えながら
「平等という語で、すべての人の権力と富の大きさを絶対に同じに
ルソーはじつは
「権力の平等」について正確に語っていないし
「富の平等」についても曖昧な迂回説明しかしていない
ましてや
「平等」そのものの概念については
まったく踏み込んでいない
「いかなる市民も他の市民を買えるほどに富裕にならないこと、い
というのはけっこうなことだが
マルクス以降の目で読み直したら
賃労働って
すでに「身売り」だよナ?
と
どうしても考えるほか
なくなってしまう
「友愛」については
1795年版の『人間と市民の権利の宣言』では
「己の欲せざる所は人に施すなかれ。
常に、自分がされたいと思う善事を他者に施すように。」
とあって
なんだか
小学校の道徳や倫理のお時間である
ナンテールで銃弾を青年に撃ち込んだフランス共和国公務員の警官
よっぽど
「自分がされたいと思う善事を他者に施」
今後自分も同じように一発撃ち込まれたらよいだろう
ともかくも
もし
言葉を書かれている通りに素直にフランス共和国国民全員で理解す
フランスのことについては
しかし
答えはとうに出ている
「国家に安定性を与えたいならば」
あらゆる「世襲」の財産や地位をすぐに廃止せよ
あらゆる相続も認めない徹底した「世襲」
権力行使を「いかなる場合にも暴力にまで強まることがない」
厳しく限定せよ
「いかなる市民も他の市民を買えるほどに富裕にならない」
「他の市民を買」うとは
「他の市民を」雇うことでもあるので
雇用関係そのものを社会から廃止禁止せよ
「いかなる市民も身売りせざるをえないほどに貧しくならない」
すなわち
時間や労力を売るという「身売り」を社会から廃止禁止せよ
あまりに当然すぎて
わざわざ
こんなふうに書き並べるほどのことも
ないだろう
これらができないというなら
羊頭狗肉の標語
「自由・平等・友愛」などという戯れ言は
すぐに下げるべきだろう
「不自由・不平等・不友愛」とか
「非自由・非平等・非友愛」とか
さらには
「反自由・反平等・反友愛」とか
あたりは
なかなか苦みが利いていて
お勧めではある
暑い時節でもあるので
日本流の逸らし
最後に
もうひとつ
誤りて人に生れし暑さかな
(会津八一)
*ルソー『社会契約論/ジュネーヴ草稿』(中山元訳、
p.110-111、p.114)
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