2024年1月28日日曜日

ジョージ・ワシントンを監視し忘れていた

 

 

 

三次元現実においてであれ

歴史空間においてであれ

物語空間においてであれ

目の前に現われるひとびとや

場所

などの

すべてに

憑依霊のように絡みつき

そのひとびと

場所

などの

すべての

情報や物語を吸い続けるわたくしだが

監視カメラの照準を

狙い定めるのを怠ってしまう時が

どうしても

出てきてしまう

 

最近

ジョージ・ワシントンを

監視し忘れていたことに気づき

愕然とした

 

現代に

とりあえずの肉体を置いて

生きているつもりになっているひとびとのうち

わたくしも含め

いったいどれくらいのひとびとが

ジョージ・ワシントンの生涯をこまかく知っているだろうか?

もし知らないとすれば

アメリカ建国の父と呼ばれるこの人物のありようを

ひとびとはじぶんの意識内に持っていないことになり

このことは

どこかの土地のひとつの町を知らないことよりも

はかりしれない巨大な空白を抱えて生きていることになってしまう

 

アメリカ独立戦争に繋がっていく

フレンチ・インディアン戦争の詳細を知る必要が

わたくしにはあるのだが

最近ふたたび文献を集め出しながら

そもそも

この一連の戦争は

ジョージ・ワシントンから始まったことに

気づき直した

 

ホレス・ウォルポールは

完結に一文で

「ヴァージニアのひとりの若者の放った銃弾が

フランスとの戦争の火蓋を切った」

とまとめている

 

1754年のこと

イギリス国王ジョージ2世の意に従い

北米ヴァージニア植民地の総督から派遣されたワシントンの一隊は

オハイオ川流域を南下してきたフランス軍兵士に攻撃をしかけ

指揮官以下の10名を殺害し

それ以外の兵たちを捕虜にした

この闘いによって

イギリスとフランスは

北アメリカやヨーロッパ

インドやアフリカなど

全世界における戦争に突入することになった

 

この事実を確認しながら

わたくしは

ふと気づいた

これまでジョージ・ワシントンという人物に

正面から照準を定めて観察したことがなかったし

くわしい伝記を一冊も読んだことがなかった

なんとうかつな

おそろしいまでに愚かな

見過ごしだったろう?

 

他人に

わたくしはまったく生きていない

存在したことさえない

などと口癖のように言うのは

こうしたことのためだ

 

すくなくとも

ジョージ・ワシントンについての十分な人物知識がない点で

わたくしはジョージ・ワシントン欠落を抱えており

彼が建国した国が数世紀にわたって世界の治安を乱し続けている以

わたくしは現代をさえも欠落的生を以てしか生きていない

ひとりの人物についての必要十分な知識と認識と評価を持たないうちは

わたくしの生は大きな空隙を抱えながら

かたわな気息奄々のかろうじての生きのびを図っているだけ

ということになる

 

遅まきながらも

まだ

気づいただけマシとは言えるが

なんという恥辱!

なんという悔い!

なんという恐怖!

ジョージ・ワシントンを十分に知らないで生きてくるとは!

ジョージ・ワシントンを十分に知らないで

世界を見たり

評価したりすることが

できると思い込んできたとは!

 

 





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