2024年3月29日金曜日

うつつあるものと思ひけるかな

 

 

 

海はここからは遠いのに

季節ならではの

イチゴを使わない工作机が

ちょうどよく

温まってきたので

雨になるだろう

明日の朝は

トナカイの筆記具に風が吹いてきて

たちまち

南の島に流れ着いたような

ぼくらだ

地面から浮いた巨大な長方形の池の

さらに上に8㎝ほど浮いて

ぐっすり眠れるだろう

快速列車も

アンカレッジへの最終便も

赤い雨でなくてよかった紫の雨で

もちろん

それも信じてなどいない

夢とこそ

いふべかりけれ世の中に

うつつあるものと

思ひけるかな*

 

 



 

*紀貫之

夢とこそいふべかりけれ世の中にうつつあるものと思ひけるかな

(古今・哀傷歌834、拾遺20、六帖4、貫之集)







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