2024年4月24日水曜日

パインアメに行き着く

 

 

 

思えば

アメ玉の旅に

いつしか

出ていたのであった

 

冬から春先にかけては

寒さも乾燥もあれば

花粉も豪勢に押し寄せ

p.m.2.5だってすごい時があるし

それに加えて黄砂まで来て

なにかというと

ノドがやられたり

声が枯れたり

風邪まで引いたりしかねないから

アメ玉をしゃぶることが

どうしても増える

 

このところ数年

だいたいは

そこらのスーパーや

ドラッグストアで買える

「龍角散ののどすっきり飴」や

カンロの「たたかうマヌカハニー」あたりで

落ち着いていたのだが

昨年の年末に

ちかくのスーパーで

UHA味覚糖の「特濃ミルク8.2」を

けっこう値引きして

セール販売していたのを買ってみてから

それまで

アメといえばノドアメ一方だったのが

選択に

幅と揺らぎが出はじめた

「特濃ミルク8.2」ときたらけっこう美味くて

空気の乾燥した

冷えた夜の東京を歩いている時に

口のなかでとろける濃厚なミルク味に

もともとありもしない

なつかしい故郷に帰ったかのような

不思議な喜びを感じた

 

そうしてからは

買うアメ玉を決めているのも

なんだかバカらしくなり

「養命酒製造クロモジのど飴・生姜はちみつ」なんかも

おおいに好むようになり

カンロの「健康のど飴〈梅〉」もよく

ライム果汁使用の「VICKSのど飴」もさっぱりして

これはこれでけっこう美味いし

声を出すのにいい

という評判で人気があり

入手困難なほどらしい

「森下仁丹 鼻・のど甜茶飴」も試してみて

まあまあだが

味という点ではさほどではないので

一度でやめてしまったものの

スーパーマーケットのコーペラティブ・チェーンたる

CGCグループの超廉価な添加物なしの「塩飴」が

意外なほど美味くて名品なので

これは欠かせないな

と再確認したり

 

こんなふうにして

アメ玉放蕩を続けるようになると

いままで手を出さなかった

あっちのアメ

こっちのアメ

といったぐあいに

色街通いをしていくはめになったが

だいたいのアメは

一度は“舐めて”みた

という

ワイセツの極みの境涯と相成ってみると

それまで

なかなか手を出さなかった

あやしそうな

昔の駄菓子屋にあったようなアメにまで

ついに手を出すように

なったのであった

 

買ってみた

あやしさいっぱいの

「パインアメ」

大阪の天王寺区生玉寺町1番5号の

パイン株式会社の

「甘酸っぱくてジューシー」と謳っている

いかにも昭和な

穴あきアメ

 

ところが

これが

ぶっ飛ぶような名品であった

 

これ以上にうまいアメは

全世界に

ないのでは

あるまいか?

 

嗜好品だから

好き好きではあるが

アメの

甘いけれど

適度にフルーツっぽく酸っぱくて

さわやかで

なんだかレトロで

ホッとする系としては

たぶん

最高峰の完成度

 

大阪では有名らしく

戦後間もない1951年に

パイナップルの缶詰のおいしさを

気軽に味わえるようにとの思いをこめて

誕生したアメだそうで

もともと

輪切りのパイナップルの模様を型押しした外見だったが

アメに穴をあけるのにこだわった社長が

自動キャンディ穴開け機を完成させて

1953年から

中央に「 ◎ 」状の穴を開けるようになった

という

 

この「 ◎ 」状の穴というのも

名物らしく

たくみに笛のように鳴らす人たちがいるらしい

新型コロナウイルス流行の際には

唾が飛ばないようにと

感染症予防対策の一環として

パインアメの吹き鳴らし自粛が呼びかけられたというのだから

さすがは大阪天王寺区の文化である

パインアメは「吹いて楽しむもの」やないか?

と反論してきた購買者に

「元々(音が)鳴るようには作ってない」

と会社も答えたというから

やっぱり大阪は天王寺区である

 

それにしても

新潮社の『nicola』1月号で

「なんでもランキングアメ部門」で2位に選出されたという

パインアメをこれまで知らず

舐めてもみなかったとは

なんたる人生上の欠落であろう!

これだから

世間のことを

だいたいわかったつもりになっていたりするなど

大間違いの元になってしまう

 

パイン株式会社の主力商品には

ほかに

アメの中にガムを入れた「どんぐりガム」や

中に入れてある重曹が

アメを舐めているとボワーッと発泡する

「あわ玉」などがあるらしい

 

「あわ玉」っぽいのは

子どもの頃に食べた記憶があるが

はたして

真性「あわ玉」だったかどうか

わからない

 

「どんぐりガム」のほうは

あまり食べたい気もしないが

子どもなどには

楽しいお菓子かもしれない

わたしが社長なら

ガムを入れたアメをさらにチョコで包むような

いたずらをしてみたい

チョコの上に

さらにアンコを塗るような

いたずらの上書きも

してみたい

 





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