2024年12月2日月曜日

これは作り物なんだぞ



  

登場人物が

視聴者であるこちらのほうを向いて

セリフを語ってくる

 

小津安二郎の映画で特徴的な撮り方のひとつで

このことから来る違和感は

だれもが感じるし

多く語られてきた

 

登場人物からのセリフが

まるで

歌舞伎の花道となったかのように

映画内のフィクション空間と

視聴者のいる現実空間とを繋いでいて

小津歌舞伎の独特な効果を感じさせられる

 

先週もなんどか

こうしたシーンを見直していて

これまであまり気づかなかったことを

新たに感じた

 

登場人物がこちらに語ってくる時

視聴者に過ぎないこちらは

その時映画に映されていない対話相手にも

なってしまっていたのだ


映画内空間が

単にこちらに繋がってきているだけでなく

映画の物語内の架空の一人物にも

じつは成ってしまっている

 

小津安二郎が仕掛けてくる構造は

もう少し深掘りして

考え直していけそうだと

また

思わされた

 

彼は寺山修司と同じように

視聴者が

映画をどこまでも拵え物であるのを忘れないように

いろいろと仕掛けた

 

映画内に別世界の現実があるかのように

ボーッと見ることもできるが

これは作り物なんだぞ

これはフィクションだからな

そう言い続けているのが

小津安二郎の映画なのでもある





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