2025年1月8日水曜日

まだまだじゅうぶんにわが身に

 


 

このあいだ

紀伊國屋書店の洋書売り場で

ヘルダーリンの見やすい詩集も買おうと思ったが

ドイツ語のものは

分厚いレクラム文庫版しかなく

文字も小さかったので

躊躇した

 

しかし

こんな部分を翻訳で読むと

レクラム文庫版でも

買っておけばよかった

と思う

 

私が子供だった時

神がよく助けてくれた

人間たちの罵声と笞(しもと)から。

そこで私はのびのびと遊んだ

森の花々と。

そして大空にそよぐ風も

私と遊んでくれた。

 

草や木があなたに向かって

あえかな腕を伸ばす時

その草木の心を

楽しませてやったように*

 

精神を病んで

37歳で知的活動を停止し

死までの36年間を

彼の詩の愛読者だった

家具職人の家に引き取られて

精神の薄明を生きた

という彼の詩は

まだまだ

じゅうぶんに

わが身に染み込ませ得ては

いない

 

 


 

*「私が子供だった時…」。川村二郎訳『ヘルダーリン詩集』(岩波文庫、2002年)所収。

 

 




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