明晰で敏捷で明るい沈黙

 

 

 

いわゆる「悟った」人というのは

やはり

いる

 

けっこう

たくさんいる

 

しかし

「悟った」人は

「悟った」と「悟っていない」の区別を

もう

まったく重視しないし

そんな区別に拘泥すれば

せっかくの意識の原っぱが重くなって不愉快になってしまうので

その点については語らない

 

語らないとすれば

「悟った」人は

ごくふつうのただの人にしか見えないので

「悟っていない」人たちには

当然

彼が「悟った」人だとは

わからない

 

「悟った」と「悟っていない」の区別を

わざわざ語る人は

ちょっと考えれば「悟っていない」人たちにもわかるが

「悟っていない」

 

「悟った」人は

「悟った」と「悟っていない」の区別を問題にする次元に

すでにいないし

どうしようもなく

いることができないから

「悟っていない」人たちへ

自分が「悟った」などと語るわけがない

そもそも

「悟っていない」人たちが持っているような「自分」が

もう

いない

「自分」と「悟った」が

もう

結びつかないし

結びつけようとしたところで

「自分」と「悟った」に

もう

縁がない

 

それでは

「悟った」人は

どのように

知られ得るのだろう

 

「悟った」人は

その人の

明晰で敏捷で明るい沈黙によって

知られ得る

 

また

「悟った」人は

なにかを語る時

言葉で

自己擁護や

自己利益を計らないことで

知られ得る