2024年5月23日木曜日

こんなこと伝えたりするべきじゃないよなあ

 

 

 

知りあいが死ぬ夢を見た

 

古くからの知りあいで

知りあい年数がやけに長いから

友だちと言ってもいいほどだろうが

友だちというものはぼくにはいないから

どんだけ長くたって

知りあいは知りあいだ

 

それが

なんとまあ

リアルな夢で

どこかの大きな病院の前で

ふいに倒れて

気が遠のいて死んでいくのだ

 

倒れた時点から

見ていて

ああ

こりゃあ死ぬなあ

と思った

 

まわりにいたひとたちが

大丈夫ですか?

いま救急車が来ますからね

とかなんとか

呼びかけている

 

ああ

こりゃあ死ぬなあ

と思いながら

ぼくは手を握っていてやっているんだが

そろそろかな

そろそろ終わりかな

と思いながら

すっかり死んでしまうのを

待っている

べつに

死んでしまったほうがいいとか

思っているわけではないが

死ぬというのは

中途半端に死ぬとか

中途半端に生き残るとかいうのが

いちばんよくないから

死ぬんだったら

ちゃんとすっぱり死んでしまったほうがいいので

そろそろかな

などと思いながら

見ている

手もちゃんと握ってやっている

ときどき

握っている手にちょっと力を入れて

ほら

ほら

その調子で

無事に

死んでいきなさいよ

死にそこないがいちばんよくないんだから

なんて

言いはしないが

思いながら

見続けている

 

大きな病院の前で倒れたのだから

抱えてすぐに駆け込めばいいようなものだが

現代というのは

いろいろ諸般の事情がございまして

そう簡単には駆け込めず

まずは救急車に来てもらってから

さあ

どこへ運びますかな?

と算段することになっているわけで

こういうのなんか

現代の問題

ってやつでしょうけれど

まあ

しかたありませんね

 

などと

よけいなことも思いながら

手を握ったまま

古くからの知りあいが死んでいくのを

見ていて

ふいにヒョッと目覚めた

 

ああ

リアルな夢だったな

と思いながら

さて

どうするかね?

こんなリアルな夢を見たことを

知りあいに

伝えてやるべきだろうか?

あなたが死ぬ夢

ありありと見たから

ちょっと注意しとくといいよ

なんて

言っておいてやるべきか?

と迷ったけれど

 

こんなこと

伝えたりするべきじゃないよなあ

正夢になるかどうか

ほんとに死ぬかどうか

死ぬんだったら大きな病院の前かどうか

とりあえずは

様子見で

それを待ってみて

夢が正しかったかどうか

確かめてみるほうが

穏当だよなあ

ひととして正しい振舞いだよなあ





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