2024年6月19日水曜日

廊下の暗さの中でチョコレートに似た香りが

 

 

 

昨日から射してきている

うすみどりの光のはかなさが

これからしばらく

まだ降誕しきらない心の

ひかえめな支えとなってくれるだろう

 

ぼくは廊下のいちばん奥の

いちばん小さな書庫まで行って

名前を忘れてしまったが

ふるびた草色の装幀の本を

引っぱり出してくる

 

そうして

書庫から出て

30㎝ほどの丈の石像の置いてある

壁龕のわきに立ち止まって

引き出した本を捲るでもなく

石像を見つめるでもなしに

まだ降誕しきらない心の奥の

遠い風景を

見つめ始めようと思う

 

廊下の暗さの中で

チョコレートに似た香りが漂っているのは

なぜか?

 

 




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