2024年7月5日金曜日

老あはれ若きもあはれあはれあはれ

 

  

 

37度ぐらいに達したようだが

クーラーもつけないし

夏だからあたりまえと思って

今日も過ごしてしまった

 

扇風機はつけている

それで十分

 

ずいぶん汗はかくので

古いTシャツを何度も着替える

外出用の夏シャツを加えると

今日は4枚着替え

夜ふけにそれらの洗濯をした

 

猛暑だった昨夏も

クーラーは

数回ほどつけただけだった

べつに

やせ我慢などして

つけないわけではないのだが

扇風機や団扇で

なんとなく済んでしまう

それだけのこと

 

今日の夕方には

2箇所に買い物などで出かけたが

アスファルトの上や

商業施設のタイルの上に

4匹ほど

ゴキブリが歩いているのを見た

 

これは

今年になってはじめてのこと

 

ゴキブリたちも

暑くなり過ぎるようになると

出歩かなくなったり

動きが逆に鈍くなったりするらしい

ゴキブリのくせに

なんとも情けないこと!

などと

昨年はハッパをかけたものだが

今年のゴキブリたちは

はて

如何に?

 

ゴキブリといえば

アララギ系の最後の大歌人

短歌界の大御所中の大御所の土屋文明は

晩年ちかいころの作品群を

ゴキブリ短歌で飾ったものだった

 

敷物も代へたのにゴキブリは不思議不思議子等は言へどもまこと出ありく 

 

背のはげし本の膠はゴキブリの好き餌といへど防ぐ術なし

 

寝台古りわらやはらかに馴れたればここを城とし籠るゴキブリ

 

置く毒に中り死にたるゴキブリか後を頼むとわが枕がみ

 

眠る前の面に来りて散歩するゴキブリを憎む無告の被害者

 

何の為にゴキブリ我がまはりにはびこるか背のはげ並ぶ本を見るか

 

本郷新花町七十年前貸二階に我を攻めしは小形のゴキブリ

 

食をつめる如き明け暮れの幾月か我とゴキブリ残し世帯主は夜逃

 

蚊が来なくなりしと思へばゴキブリか吝しみつづける暖房のため

 

ちっぽけな美意識や倫理観の争いだの

繊細ごっこや

人間性ひけらかしごっこ

気づきの見せびらかしごっこ

一発芸の人目惹きごっこ

ヘンな言い方や韻律壊しごっこなど

現代短歌が陥りがちになる

若書きの小手先芸などはおおらかに無視して

土臭い太い精神で

ずんずんと押し続けていった巨大歌人であった

 

わたしはアララギ派ではないけれども

土屋文明で終わった近代短歌を惜しみ懐かしみ慕う

 

もうちょっと

土屋文明の短歌を見ておこう

 

老あはれ若きもあはれあはれあはれ言葉のみこそ残りたりけれ

 

貧と窮と分ち読むべく悟り得しも乏しき我が一生なりしため        

 

消極に消極になるを貧の慣はしと卑しみながら命すぎむとす         

 

人を悪み人をしりぞけし来し方もおぼろになればまぬがるるらむ

 

ふらふらと出でて来りし一生にてふらふらと帰りたくなることあり

 

生みし母もはぐくみし伯母も賢からず我が一生恋ふる愚かな二人

  

母に打たるる幼き我を抱へ逃げし祖母も賢きにはあらざりき

 

乳足らぬ母に生れて祖母の作る糊に育ちき乏しおろかし

 

寺を出でて冬の日しづかに歩みゆく妬みも無けむ生きてゐることは  

 

そうして

やはり

決定打はこの歌

 

近現代短歌の至上の一首が

これ

 

原爆をまぬがれし与茂平亡きことも赤電話して知る関係なき菓子店

 




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