2024年8月10日土曜日

もうヴァンカもルイーズもキャサリンもおらず


 

 


上り調子の快活な暑さも

もう

衰えたというのに

夏休み

などという嘘の

口先ばかりの

印象操作が子どもたちに仕掛けられ続けている

 

暑さが続く

といったところで

もう

まとわりついてくる憑依のような

時代遅れの暑さで

 

ガッカリさ

 

海だって

もう

クラゲばっかり

 

砂浜には

もう

ヴァンカも

ルイーズも

キャサリンもおらず

ぼくはひとりで

棒で線を引いて歩き続けたり

桜貝を拾ったり

ときどき立ち止まって

だれもいない海にむかって

大きな貝の割れたのや

水に揉まれてつるっとなった石を

投げたりするだけ

 

せっかく

まだまだ海にいるのに

魂のぬけたような

しらっちゃけはじめた夏の

この残像の

ありありとした

さびしさよ

 

宿では今夕も

きっと

サヨリやアジを焼いてくれたり

サザエも壺焼きにしてくれたりするだろうが

ぐっと数の増えた

コオロギたちの声が

ちょっと立て付けの悪い戸のすきまから

ほのかな安手の永遠のように

ずいぶんと親しげに聞こえてきて

ぼくの気持ちを

ものの終わりというもののほうへ

散らしていって

しまうにちがいない

 

 

 




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