誰よりも和歌のすべてに精通しつつ
にもかかわらず
稀代の日本批難家であり続けた
昭和の天才歌人
塚本邦雄のこんな歌が
また
めらめら
わたしの頭の中に炎を上げている
而(しこう)して再(ま)た日本のほろぶるを視む 曼珠沙華畷(なわて)の火の手
こんな時節は
何度となく
この秋津島を襲ったのだから
パリ市の紋章の銘である
Fluctuat nec mergitur
(たゆたえども沈まず)
を思い出して
なんら動ずることもなく
過ぎ越していけばいいのかもしれないが
それにしても四季を問わず
滅びの曼珠沙華は
めらめら
まことによく
燃え続けている
わたしが塚本邦雄と握手したのは
たった一度だけだが
あれは夏でもなく
冬でもなく
たぶん春か秋の
中途半端な季節で
しかしながら
すこし蒸す日のことで
先生はまっしろいブレザーに
青いシャツを召されて
金色の扇をパアッと拡げて
ゆらゆらと首元を扇いでおられた
無難な地味なスーツ姿でなどなく
誰からも目に留まるような
晴れやかな姿でおられたのが
いま思い出しても
目を幾重にも覚まされるようである
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