2026年8月28日金曜日

たくましい自然の回路への入り口

 

 

 

じぶんが住んでいるわけではない

ある集合住宅の1階で

エレベーターが降りてくるのを待っていた

 

すこし脇の壁に

かなり腹を食われた虫の死骸があって

壁にぶら下がっていた

 

蜘蛛が食べた虫なのだろう

食い残された部分が

蜘蛛の糸に吊されたまま

壁に貼りついていたのだった

 

少年時代の昔ならば

こういうのを見つけると

汚らしい感じがして嫌だった

少年時代の

そんな感覚を思い出して

すこし懐かしい気がした

 

ちょっと不思議に思ったのは

2016年の現在では

虫のこんな残骸を見ながら

むしろ豊かなものへの入り口のように

感じられてならなかったことだ

 

蜘蛛の巣も

虫のこんな残骸も

見つかればすぐに取り払われてしまう

この現代にあって

こんな光景を目にできたことが

なにか

それ自体とても豊かだった

 

虫もいて

蜘蛛もいて

虫は蜘蛛に食われ

残骸が蜘蛛の糸に吊されたまま

こんなふうに

しばらく壁に残って……

 

これが

どれほど素晴らしい光景か

21世紀の人間が

たびたび立ち戻ろうとするべき

たくましい

自然の回路への入り口か

 

そんなことが思われ

貴重で

うれしい

エレベーターの待ち時間となった

 

 

 


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