妙とはたへなりとなり。たへなると云ぱ、形なき姿なり。
形なきところ、妙体となり。
(世阿弥『花伝書』)
友はみな一場の友
friendならもっと続くのか
amiなら
amigoなら
Freundなら
いずれは枯れる雑草
緑濃き
瞬時は記憶されよ
あらたに出会う娼婦たち
あらゆる娼婦的なものだけが
よき気晴らし、慰め
風吹いて
雨降って
ミルクチョコレート
くわえる唇
重ねるあれほどの愉しさも
古い恋文の封筒の黄ばみ
受けては返し
消え去るままにしてゆく
電子メールほど
さっぱりとあるべきか
すべて
紺碧の空は宵化粧し
レストランの華やぎが
永遠にわれらを待つ
しかし永遠にわれらは赴かず
永遠にわれらを構成せず
使用頻度少ない人称よ
廃兵院
文法書の丸屋根を
星々の明りは
薄い蜜のように滑る
華やぐ場所に
それでもひとりを着ていく
遠いわれらの
やわらかな斥候のように
輝くグラスをつまみ
冷たく震える銀のフォークを操るため
遺伝子は旅する
人生を構成する普通名詞は
もうすべて使い終え
固有名詞の代入練習も終えた
動詞活用も諳んじ尽くし
裸足で踏み入ったことのない汀が
ああ
もうどこにもない。
人生の外へ
人生の外へ
なおも
どこかで鳴る踏切の警報機
私もカモメ
花園にある時は
他の花園から隔絶されねばならぬ
宇宙のさだめ
ああ陶酔の時よ来い、か
陶酔の後を
覚醒という酔いもなく下降しゆく遊び
閑吟集を
秋冬に繙く通俗は避けよ
夏!
夏!
水遊びする子を
跳ねる鯉を
永久機関になおも
われら
組み込まねばならぬ
友なき里の蝙蝠
まだ蚊がいる
キンカンとムヒのにっぽん
鉛筆はもう
ミツビシとは限らない
指先に嵐
心は自尊せよ
あかるい空虚を維持するために
ドウシテアナタハ
ろめおナノ
くり返される問い
嘆き
つかのまの喜び
されど
勝算
なきにしもあらず
なきにしもあらず
我アルユエニ我アリ
我ナキユエニ我ナシ
あほらし
ある/なし
現象の継起に
暫定的乾杯
賑やかなレストランに
暫定的着席
ここからは思念も
花
花
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