わたくしの近くには
うつくしい時計たちがいっぱい
高級というのではない
特別製ではない
ある商品に触れて
それを選べばすべては
特別になる
うつくしくなる
わたくしが選んだわたくしの時間
の
比喩
表象
がそれら
うつくしい
いとしい
時計たちよ
金属製の
しかし
多くはプラスチック製の
秒針の
とりわけ愉しい動き
ひとはどれだけそれを
慈しんで追ってやるものだろう
一分を表象することの
なんという冒険
秒針は
十五秒を過ぎると
きまって
やや重くなりはじめ
二十秒から
二十九秒までは
信じがたい遅さで進んでいく
そこからがまた不思議
三十秒を過ぎて速まることもある
重さをなおも引きずって
逆転して戻ってしまうのでは
と感じられるほど
ゆるゆると
数字12へ上っていくこともある
秒針よ
秒針たちよ
わたくしの生は
おまえたちを眺めるのに
捧げられ続ける
昨日は
眺め終えたあとで
牛のテールスープのうまい
リュックの食堂に行った
今夜はひさしぶりに
ガンバラの店まで
足を伸ばそうと思う
ビアンションも
来ているかもしれない
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