なぜ銃で兵士が人を撃つのかと子が問う何が起こるのか見よ
(中川佐和子『海に向く椅子』)
日本の報道自由度は世界で五十一位だという
こんなにニュースや情報で溢れかえっているようなのに
ニュースをみるのは
カッタルイ
どんな情報も
ツカレル
年金特別便とやらの説明を読むのも気が進まず
ちいさな饅頭をつまみ
お茶を淹れてソファに座ってから
どれどれ
と読みはじめたぐらい
あたまに入ってこなくて
まいった
ようするに
どうしたいってのか
どうしてほしいってのか
あんな不祥事をひき起こして
菓子折りのひとつやふたつ
当然だろうと思っているあたまには
最初からパラダイムがちがう
奇妙な説明書き
回答して書類を返送するなんて
めんどくさくってできねえや
急いでも数分はかかる
二度と戻ってこない数分
悪かったのは
どっちだってんだ
悪いことしたら
どうするんだってんだよ
いらいら
いらいら
饅頭をふたつも食べちゃったじゃないの
業務上背信みたいなこと
勝手にやらかしやがったくせに
言いたかないんだけど
罵詈くんや
雑言くんが
舌にのぼってくる気配
ツカレル情報といえば
それそれ
また来る確定申告
もうじき又確定申告がやってくる
確定申告ネロ
お前の書類
お前の領収書
お前の計算機が
今はっきりと僕の前によみがえる
だいたいは慣れているものの
今年はどう違うのか
なにがかわったか
説明をよく見ておかないと
以前のように大間違いしかねない
いらいら
いらいら
税金はニッポンくらぶ会費
国家サービス費
ってことだろうと思うことにしているが
こんな申告にかかる時間と手間ひま
どうやって償ってくれるのと思う
あほらし
あほらし
どうせこちらの微々たる収入高を把握してるんなら
そっちで計算して持って来いっての
日本の報道自由度は世界で五十一位だというから
隠微に報道管制がしかれてるんだろな
と思うものの
報道屋さんたち
ひょっとして
みなさんお疲れェ
こんなの見聞きしたらもっと疲れちゃうじゃん系情報はカットして
みなさんのお役に立ちますねェ
とサービスしてくれてるのかもしれない
おもいやりの国
にっぽん
ありがとうございます
見たり聞いたり
したって
どうにもならないものね
たしかに
ボカスカ
ボカスカ
一五一平方キロのなかに一五〇万人が密集しているガザ市に
イスラエルが爆弾ロケット落としまくって
ナチスにされた虐殺のウサを晴らしまくったニュースなんて
見たり聞いたり
したって
しょうがない
ま、MがハードSになるってのは
よくある話さ
なんてオチャラカして
ガザ市は東京に例えると
江東区+目黒区+品川区+世田谷区の半分+杉並区+練馬区の半分+板橋区+北区ぐらいの広さだそうだが(P-navi infoのビーさんのブログ参照→
ようするにこれは
養殖池のなかでハッパをしかけて
魚を取るようなもの
ナチスだって
アウシュビッツやダッハウやトレブリンカをまるごと空爆はしなかった
フーシェはやったな
フランス革命の時
数百人を縛ってそこに砲弾を打ち込んで河に流すという処理法
あれに学んだってわけか
勤勉、勤勉
たいへんよくできました
見たり聞いたり
したって
しょうがない
たしかに
ガザからのこんな写真だって
トロントのユダヤ人女性たちが
まさにユダヤ人女性として
パレスチナに自由を!と自分たちは訴えると表明している姿だって
見たり聞いたり
したって
しょうがない
イスラエルの大都市テルアビブで
ほかならぬユダヤ市民たちが
自分たちの国の戦争の愚かさを批判し
一万人を超える反戦デモをしたことだって
見たり聞いたり
したって
しょうがない
世界にむけてインターネットで配信され続ける
キーボードと
カメラしか持たない人びとからの報告を
見続け
読み続けたって
しょうがない
これらの報告の
ひとつ
ひとつを
一日に数十もスクラップしながら
書かれていることを
まるで詩のように
分かち書きしてみたって
しょうがない
しょうがないんだけど
声は来る
声
声
これらの声………
………爆撃の場所
死体の山
まだ生きている人いますか
何人?
手をあげてください
ちゃんと手を上げる人
頭をもたげる人
最後の力をふりしぼって
でも
まもなく死んでしまう
全身が焼けただれて死ぬなんて
思わなかったでしょ
手足を失って
大瓶のコカコーラ
いくつもこぼしたみたいに
ガイアの肌の上に
血をまきながら
まだしばらく意識があるなんて
驚きでしょ
はみ出した腸を
垂れ下がらせている人よ
そんな大穴が開くと
お腹の中って
スウスウするものかな
みんな血の海に転がって
赤の広場
盛大なトマト投げ祭りの
巨大な会場みたい………
………まさか大学に
ミサイルは撃ち込まないよね
残念
はずれ
バスなんて
空爆中に待ってちゃだめだってのに
大勢で列つくって
なんで
バスなんて待ってんだ
地獄行きのバス
イスラエル空軍パイロットは思った
こいつぁ打ち込んでやらないと
お仕置きしてやらないと
ボタンひと押し
スマートなお仕置き
スマートって
おれ
好きなんだよな
ほうら
七人がスマートに吹っ飛んだ
四人は学生
三人は大学近くの子
なんだかマザーグース
レイエス家の少年たちだってさ
とても仲のいい三人
三人いっしょに生きてきて
三人いっしょにおさらばだ
三人いっしょにおとむらい………
………さあさ、こっちは
下校途中
高校生のふたり姉妹
空爆隊にようやくに
入れたばかりの光輝ある
イスラエル兵の俺さまとしちゃ
逃しはできない練習標的
ボタンひとつで
もらさず殺す
それっ
あ
やったね!
あたり
帰ったら
恋人にも誇れるぜ
高校生の妹にも
おんなじ歳のをヤッてきたと
鼻高々でいばれるぜ………
………学校から帰る途中
こんなそんなで
おおぜいの
子どもは死者の仲間入り
とんとんともだち
みんなで九人
一っちゃん
二ろくん
三ぶちゃん
四ゲ坊
五ろちゃん
六くんぼ
七なちん
八ッちゃんこに
九ゅうどんどん
どんどん
どんどこ
ばらばらに
されるために
子どもはあるって
児童憲章に書いてなかった?
ヘブライ語版には
あるんだけどね
まあとにかくも
生まれ落ちた
民族や場所が悪かった
ガザに住んでりゃ
テロリスト
あんなかわいい顔して
字も読めない小さな子でも
ちっちゃいのも
でっかいのも
駆除しなければと
オルメルトも
バラクも
リブニも
がんばるがんばる………
………最初の空爆から三〇分ほどたって
通りの少し手前
警備隊司令本部の前を通りかかったんです
あたしたち
帰宅の途中でした
そうしたら
司令本部にミサイル
あんまり急で
驚く間もなかったわ
バラバラになっちゃって
どれがあたしだか
わかんなくなっちゃった
通りのはしから
はしまで
腕も
脚も
あたまも
腸も
腰も
独立宣言しちゃって
散らばっていった
靴をはいている足
はいていない足
どれがあたしので
どれが友だちのか
わかんなくなっちゃった
でも
わかんなくってもいいの
いっしょに
お墓にいれてください
なかよしだったし
もっと
なかよしになれるし………
………病院の廊下というより
屠畜場でした
床は血の海
おおげさですか
たしかに
数十センチも
血がたまっているわけじゃないですからね
流れちゃいますから
せいぜい
数センチの深さですが
そんな血だまりのなか
負傷者は壁にもたせかけられたり
死んだ人ととなりあわせで
床に寝かされたり
もげた手や足の先から
どんどんと鮮血を
血の海に補っていました………
見たり聞いたり
したって
しょうがない
たしかに
美しかった今朝の
あさやけ
そぼ降る雨の
しずくをとどめる薔薇の
芽
わざわざ
きれいなカードに
ていねいな文字で書いてきてくれた
礼状
ゆうぐれ空に
大きく
おおきく
うつりかわる色の
あの雲
この雲
見たり聞いたり
したって
しょうがない
たしかに
開けているだけで
目に入る
地球のけしきの
すべて
鏡にうつる
一回きりの生の
きょうだけの
今だけの
顔
こころをよぎる
失われていったものの
たくさんの残像
ふと開く
白秋の童謡
みんな
みんな
やさしかったよ
という
歌詞
からたちの花
みんな
みんな
やさしかったよ
と言えずに
死んでいった人たちに
小声で
からたちの花を
つぶやく
ちょっと鼻歌してみる
行ったこともない
パレスチナ
からたちの花の季節には
白い
白い
花が咲いたよと
つぶやきながら
鼻歌しながら
ことしから
あなたたちに
捧げよう
からたちの花
見たり聞いたり
したって
しょうがない
そんな
ことばかりの
地球で
宇宙で
こころや
意識のひろがりの
ぼんやりしたなかで
あまったるい詩を読み
詩みたいな言葉を
へたくそに並べ
ぼーっと生きている
あるかなしかの
ぼくにできること
白い
白い
からたちの花を捧げながら
つぶやくこと
ちょっと鼻歌してみること
白秋さんの
書いたそのままに
そのままに
借りちゃって
からたちの
そばで泣いたよ
みんな
みんな
やさしかったよ
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