眠りの少なかった朝
それでも必死に起き続けて
仕事を続けていると
脳はいつのまにか
うつらうつら
ふっと見たのは
ひとりの男の内面と
ある日の浜でのすがた
死んだ妻と来た浜
そこで彼が撮った写真
浜にシートを敷いて
きちんと足を横ぞろえして
胸を反らし両手で
髪を持ちあげている妻
恍惚と目を閉じ
髪に手櫛を入れている
彼はその写真を思い出し
かつて妻がいた場所に
心の力で拡大し
心の力で置き
歩き寄っていった
そうして座る
かつての妻のわきに
時間がまだ若かった頃の
妻のかたわら
老いてしまった今の時間の
わが身を置く
なぜ見えたのかわからない
うつらうつらすると
こんなことが多い
自分のことかとも思うが
やはり係わりがないとわかる
だれのことであったか
だれのことであっても
見ていたのはわたし
内面のしぐさまで
見ていたよ
男よ
浜に居あわせても見えない
心の所作を
見たよ
死んだ妻だったかな
わたしこそが?
いや、ちがう
やはり係わりがないとわかる
そのほうがいい
係わりのない人が
他人の
内面のしぐさ
心の所作を見てとる
なんのためでもなしに
意図したのでもなしに
あるかなしかの
風のように
しかし
たしかに
じゅうぶんに
じゅうにぶんに
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