2011年5月22日日曜日

ふっと見たのは



眠りの少なかった朝
それでも必死に起き続けて
仕事を続けていると
脳はいつのまにか
うつらうつら

ふっと見たのは
ひとりの男の内面と
ある日の浜でのすがた

死んだ妻と来た浜
そこで彼が撮った写真
浜にシートを敷いて
きちんと足を横ぞろえして
胸を反らし両手で
髪を持ちあげている妻
恍惚と目を閉じ
髪に手櫛を入れている

彼はその写真を思い出し
かつて妻がいた場所に
心の力で拡大し
心の力で置き
歩き寄っていった
そうして座る
かつての妻のわきに
時間がまだ若かった頃の
妻のかたわら
老いてしまった今の時間の
わが身を置く

なぜ見えたのかわからない
うつらうつらすると
こんなことが多い
自分のことかとも思うが
やはり係わりがないとわかる
だれのことであったか
だれのことであっても
見ていたのはわたし
内面のしぐさまで
見ていたよ 
男よ
浜に居あわせても見えない
心の所作を
見たよ

死んだ妻だったかな
わたしこそが?
いや、ちがう
やはり係わりがないとわかる
そのほうがいい
係わりのない人が
他人の
内面のしぐさ
心の所作を見てとる
なんのためでもなしに
意図したのでもなしに
あるかなしかの
風のように
しかし
たしかに
じゅうぶんに
じゅうにぶんに

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