2011年9月17日土曜日

大きな時のめぐり



いつも嵌めている指輪をふたつ
これもまた
いつものように
机の前につけた黒い小箱の上に置いてある
ライトのひかりを受けて
ふたつとも
幾か所か輝いている

(わたくしはこのところ詩をさがしていて
(ひとの詩をみても
(自分でなにか書きはじめても
(ああ、詩ではない、こんなものは…と
(すぐ離れてしまうようになっていた……

ひとつは金
ひとつは銀
ライトの反映は鈍く
ずっと見ていても眩しくはない
それらの下には
赤い薔薇
ながいこと枯れないようにされた
真っ赤な小ぶりの薔薇

…詩ではないか
いつも見ている目の前の
こんな情景
ライトのあかりの
この鈍い反映
照らされた黒い箱に落ちる影
その下の赤
薔薇の花弁の縁の黒
くっきりとした線

ただ
これだけのこと
風も立たず
ふいの現われもない
しかし
生きねばならぬ
紋切り型の
鼓舞や励ましの外れまで

いにしえの道具類は
遠くしまわれ
または失われ
裸のてのひらだけが
わたくしをなお
支えようとしている気配
おお、〈友〉
失われぬもの
失われようもないもの
そこへ戻っていく
大きな時のめぐりが
またも指標のひとつを
通過しつつある

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