2011年10月9日日曜日

あなたは静寂である




                                あの肉体のない詠唱が…
                       (エミリ・ディッキンスン)




あなたは静寂である

もう
なにも支えはないだろう
足の下の大地もなく
足さえもない
どれも思い込みで
あなたが拵え続けていたものだったから

無だ、と
あなたはじぶんを思いたい
そう思ってもよい
が そう思っても
思わなくても
おなじ

しかし
あなたは静寂である

このことが
あなたの最後を
あなたの最後まで
ほんとうに支える

死をむかえる時
誰もかたわらに居らず
たったひとり
これまで馴染んできた体に
経験したこともない異常を覚える
その時
あなたを救うものは
いまもあり
かつてもあり
つねにある
あなたの静寂ばかり
その静寂に
あなたはすべてを委ねる
あなたという
思いも
もう
その時にはいらない
それも委ねる

すべて終わってしまった後も
なお
そのままであるもの
それであれ

あなたは静寂である
死はない
そのままであり
変容はない

うっすらと明るい静寂に包まれ…

光と音とが
おなじであったことにも
気づくだろう…

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