ところが,あなたがたの頭の毛までがすべて数えられている。
それゆえ,恐れることはない。
(マルコによる福音書10:28~31)
渋谷駅前の交差点に来ると
もう
大ぶりな雪だ
世界はひとしきり明るくなり
スターバックスのビルの上を見上げると
照明にきらきらと澄んで
舞台上から舞う
細かな細かな雪のよう
本当の雪を
舞台の雪になぞらえるのも妙だが
いつもの街が
劇の中のように
変わったのは確か
珍しくもない渋谷の交差点で
しかし
大雪の舞い落ちるのを見上げるのは
人生で何度ほどある?
豪雨なら何度もあった?
炎暑なら何度もあった?
無数にあったようでも
人生の総日数は無数ではない
どんな天気の日も
数えられる数しかない
大きな大きな砂時計かもしれないが
生を計る砂粒の数は
しっかりと
定められていて
最後の一粒が落ちる日はいつか?
いつでもよいが
決まっている
避けようもなく
ちゃんと
来る時は来る
何年も前まで
マルイの側には大盛堂書店があって
さらに何年も前までは
その最上階に洋書売場があって
そこの乱雑な置き方や
本選びの奇妙さが
まるで銀座にあったイエナ書店のように
お気に入りだった
店の終わるまでの長い時間
来る日も
来る日も
そこで洋書をめくって過ごし
買ったり
買わなかったりして
若く
疲れをしらない日々を
過ごした
そこでたいてい一緒だった友は
いまでは脆い骨のかけら
どんどん不思議に思えてくるのは
本当に詳細にひとつひとつ
友との瞬間を
覚え込んでいること
舞う雪は
過ぎ去るもの
終わるものが
まだ過ぎ去らず
終わらないことの
さなか
終わるのはわかっているのに
終わっていない姿
いま起こっていて終わっていないこととは
なに?
雪、こころ、夢、はじまり…
陶然と
とほうにくれて
雪のなか
わかるべきことだけわかるように
それだけを握り締めるために
なにもかも
すっかりわからなくなってしまいたい
…もう
大ぶりな雪だ
雪降りは
それだけでなにかの頂点
至上の時
いつも雪降りの
生かと
思い直す
見上げない
だけのことだったかと…
まだ過ぎ去らず
終わらないことの
さなか
終わるのはわかっているのに
終わっていない姿
いま起こっていて終わっていないこととは
なに?
雪、こころ、夢、はじまり…
陶然と
とほうにくれて
雪、こころ、夢、はじまり…
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