成長は哀しい
綴じ糸の緩くなってきた本を
開いては閉じ
はじめから読み出す気にもならぬまま
活けたばかりのチューリップの
ピンクの花弁のやや白い筋を
追わせるふたつの視線
見るから
哀しいのだろうか
海の鮮やかな
遠さよ
若き日は老いの
すべてに内含され
絶えぬ波音が
静寂の中にも激しく
生後間もない赤子の首の皺の
やわらかい深さの奥に
沈んでいく
幾許かの希望
時間でしかない蔓の
絡みあい
緑濃い葉々の
一様に向く空の高み
低みに
視線を逸らせば
変わる
見ることの海
指の腹でなぞる
本の古い紙のおもても
棄てないでいく
まだ伸びる
葉脈の
兆しを受けて
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