2012年2月14日火曜日

やがては青に




夢も跡なく夜も明けて、村雨と聞きしも今朝見れば、
松風ばかりや残るらん、松風ばかりや残るらん
(謡曲『松風』)




ここまで
逃げて来たからにゃ
追っ手は来まい
砂浜は
見ろ
むこうまで
まぶしいばかり
まっしろに
おれの未来を
祝ってる

思い出すまい
やらかして
きたこと
逃げて
きたものも
せっかく
この世に来たからにゃ
しがらみ
世間
義務
倫理
約束
すべて
投げ捨てて
まっさらになって
だれも居ぬ
こんな浜辺に来たかった

おてんとさまと
海の音
すこしは
風もあるらしい
こころ
はだかになりきって
堂々
ふらふら
ぷらぷらと
どんな格好も
好きなまま

この先
なにを感じたり
考えようとも
他人には
もう会いもせぬ
言いもせぬ
おれはこれから
海になり
空になり
また
砂になり
生死ひらひら
うらおもて
やがては
青に
吸われゆく
やがては
青に
吸われゆく



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