2012年7月25日水曜日

鈍いかがやきの今



幼年時代も
少年時代も
なつかしくない

死んでしまった人たちを
思い出すことはあり

ああ、

ああ、

と思うことはあるけれど

死んでしまったのを
さびしく思うことはないし
悔やむこともないし

だいたい
本当に死んでしまったとは
あまり
切実に思っていない

今が
いちばん
なつかしい

この今が

この部屋から出て
すこし向こうへ歩いていけば
洗面台の陶器があり
便器の陶器がある

あの陶器の鈍いかがやきが
というもの

死んで何千年経っても
思い出すのは
この鈍いかがやきの

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