幼年時代も
少年時代も
なつかしくない
死んでしまった人たちを
思い出すことはあり
ああ、
ああ、
と思うことはあるけれど
死んでしまったのを
さびしく思うことはないし
悔やむこともないし
だいたい
本当に死んでしまったとは
あまり
切実に思っていない
今が
いちばん
なつかしい
この今が
この部屋から出て
すこし向こうへ歩いていけば
洗面台の陶器があり
便器の陶器がある
あの陶器の鈍いかがやきが
今
というもの
死んで何千年経っても
思い出すのは
この鈍いかがやきの
今
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